『退職給付に係る負債と企業行動―内部負債の実証分析』(2021年10月特集第4回)

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2021年10月号特集受賞図書特集(2021年4月~9月受賞)

学会、経済関連団体より、2021年4月から9月に表彰された書籍5点をご紹介。担当編集者に書籍の内容や企画背景、受賞した賞について尋ねてみました。読書の秋に、最高水準の"知"の息吹を感じてみませんか。

今回は、「日本会計研究学会 第80回大会 太田・黒澤賞」受賞書籍を紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

1990年代、米国の大企業において、企業年金の積立不足が判明し、社会問題となりました。この辺から、退職給付(企業年金、退職金)をめぐる研究として取り上げられる機会が増えました。本書は、日本企業における企業年金の未積立について実証的に分析したものです。




Q2 本書を企画したきっかけや背景を教えてください。また、どのような場面で読んでいただきたいですか?

当初から、著者の研究テーマは「退職給付」であるというのは知っていました。また、本テーマは、実務家にとっても関心のあるテーマであり、出版の意義はありました。

実証研究ではありますが、やはり実務テーマを扱っているので、企業の経理・財務、または関連部門の方にも、読んでいただきたいです。


Q3 本書が受賞した賞はどのようなものですか?

本書が受賞したのは「日本会計研究学会」の「太田・黒澤賞」です。「日本会計研究学会」は1937年12月に設立されましたが、学会設立に当たり発起人のメンバーとして多大なご貢献をされたのは、太田哲三先生と黒澤清先生です。太田哲三先生並びに黒澤清先生は、わが国会計学の理論的礎石を築かれ、また、会計制度の近代化にご貢献された先生です。20世紀の中葉において、いち早く「企業会計原則」制定の中心となってご活躍され、今日の会計制度の基礎を築き上げられました。

また、本書は、2020年に「日経・経済図書文化賞」も受賞しています。


Q4 読者の方へのメッセージをお願いします。

企業の永遠のテーマですので、隣接分野の研究者の方、実務家の方、関心ある方におすすめします。

弊社誌『企業会計』2020年12月号の書評(音川和久先生・神戸大学教授)でも、「退職給付はすべての人々に関わる重要な問題であるから、広く一読をおすすめしたい」と評価いただきました。